人の受難と神の苦難の鏡像関係

 

この世の不義と人の蒙昧に苦しむ神の苦難と、ありきたりな人間が政治的世界に組み込まれ自由を奪われる人間の受難。

神の苦難は「受肉」、普遍的存在が有限の個人になる事によって起こる。
人の受難は個性化による全体化の過程で無意識を意識に組み入れる事によって、普遍性の獲得によって、人間集団の中で注目に値する人物になる事によって起こる。

人の受難と神の苦難は鏡像を成す。

 

C・G・ユング著書より一部抜粋・要約・補項

 

要は普遍性を持った存在がリソースの限られた世界で遭遇する典型的な問題とでも言えるか?
物質世界には限界があり、しかしその限界が有るからこそ最適解も生まれるという…

高等知性体概念

 

知性体におけるソフトウェア的発展過程の結論=高等知性体概念

 

「「投影」という認識行為に対する一考察」で述べた「投影による主体認識系」と「元型による客体認識系」の相関によって人格化は精錬されていくのかも知れない。

つまり

人格=情報認識システム=自我+意識=「自己」−(個人的無意識+集合的無意識)(…面白い逆算だな…)

そして

「投影による主体認識系」と「元型による客体認識系」の相関関係=自律的人格精錬フィードバックループシステム=「自己認識プロセス」

結論としては「高次の人格とは情報認識の極みであり、高等知性体ほど情報の価値が高まる」

 

 

このフィードバックループの確立には「客体」が必要であり、全てはこの「鏡像的認識構造」の産物である。

そして先見的には「アルパ」、そして結果としての「オメガ」なる者

=「自己」

“神は自らの似姿として人を創った”

とか?つまり

「自己」(テンプレート)+鏡像的認識構造(プロセス)+リビド(動因)=人格の極み=「神」

な訳だ、要は。(何気に三位一体)そして

神性の受肉=自己実現=人間を新たな「神」にする事

と、なる…な…

 

 

要は「無力な存在」に、「神」を認識させることによって「神」になりたいという欲動を生じさせ、そこへ至るインフラを用意すれば結果「神」に至るという?

最小構成単位としては

・主体と環境=主題=知性体と世界
・発展プロセス=過程=鏡像的認識構造=「投影」
・「神」概念認識=結論=「自己」=アルパ(始まり)にしてオメガ(終わり)

主体が環境から発生した問題を解決出来る存在足ろうとし、そこへ至るプロセスさえ整えておけば、結果「神」となるという…事かな?

このプロセスは人間社会においても散見される汎用的なプロセスだな…「場と存在と手段と目標」が有ればあとは勝手に育つ、と。
「自律性」は「究極の手段」という事か?シムシティみたいだな…要は「動的」な訳だ、世界は。
ミニマルな構造のフラクタルな連続…

なんでそんな事をされていらっしゃるのかは不明…

 


アプスー思想用語集

真・女神転生3

世界を創るも良し、壊すも良し…

 

真・女神転生3:
受胎に纏わるモチーフを基にした世界観は、前作、真・女神転生2のマクロで具象的な世界観と対となる、抽象的でどこか哲学的な世界。

ボルテクス界のモチーフは子宮で、コトワリを持った者がカグツチという卵子へと辿り着くことで新たな世界が生まれる、というプロット。
その為か受胎後の東京は荒涼としていながら退廃的とはまた違う、新生の為の力に満ちたどこか不思議な世界となっている。

「悪魔は2度生まれる」のキャッチコピーに合わせてか、マニアクスのアマラ深界では主人公の二度目の誕生に合わせて子宮そのものをモチーフとした背景美術が存在する。

神の居無い(悪魔ルシファーの創った)世界では、天使達が力至上主義に賛同し、堕天使達が何処か哲学的な秩序の維持者になっていると云うのも前作との鏡像となって興味深い。

私が最後にハマったテレビゲーム。プレスターンバトルというゲームデザインはターンという概念を具象化してコントロールするという点で画期的なものだろう。
ゲームの道は完全言語の如き体験型総合芸術へと続いている。

 

真・女神転生2

 

僕は自分が何者なのか、やっと分かったよ
何の為にこの世に生まれ出て、何を為すのか
そして、何処へ行こうとしているのか…

 

真・女神転生2:
前作、それ以前から線形に続くマクロでサイバーパンクな世界観、ドライでウィットに富んだテキスト、個性的なドット絵や音楽等、今でも思い出深いゲーム。

エレガントなメカニカルといったデザインコンセプトや、破壊神という「破壊を行う“神”」といった概念、完全武装し悪魔と戦う「天使」、元々は天使だった堕天使としての「悪魔」やキリスト教によって堕としめられた異邦の神々としての「魔王(Fall’n Gods)」、そしてLawエンドでのサタン等子供心には色々衝撃的だった。

 

かつて私が人間に知恵を与えたのも、人間を自らに支配させようとした為
そして地上は人間の国となったのだ

 

ルシファーのものの考え方には共感を覚えるが、最後まで無私を貫くサタンの生き方には感動すら覚えた。

「生」のプロセス

未分化 – 分化 – 統合がこの宇宙における生のプロセス。
このプロセスは宇宙誕生時における素粒子の働きから、現代における人間の社会的な行動、個人の内的な心の働きに至るまで、あらゆる場面に通底している。

 

このプロセスは世界各地の神話や物語において生と死と再生や創造、秩序、破壊(による再生)といったモチーフで表現されており、例えばキリスト教神話におけるイエスの生と死と再生は、典型的な英雄神話であるとともにこの「生のプロセス」の象徴でもある。

生(未分化)・諸要素が混沌としたひと塊りな状態

死(分化)・認識によって各要素が機能ごとに細分化されてバラバラになった状態

再生(統合)・各要素があるべき目的の元に再配置された状態

これが「人間に受肉した神が人として死に再び神へ至る」というストーリーの心理学的な象徴解釈の一例である。
ここで未知のキリスト教神話の象徴は、そこに投影されていた意味を理解され一旦死を得、知識として再生されてもいる。

 

ここで気をつけてもらいたいのは、還元論的アプローチではこの解には辿り着けない、という点だ。
還元論では精々人が死んで生き返る訳なぞ無い、程度の発言しかできないだろう。

この解は、物理的なアナロジーを用いて間接的に未知の意味が提示される「投影」と言う無意識の持つ心的機能への理解によって、はじめて可能となる。

錬金術と宗教が自然科学と心理学へ至る歴史的経緯

錬金術師達が黄金造りや不死の霊薬といった世俗的な目的を超えて、救世主の再臨のような宗教的テーマを錬金術に与えていたのは、しかしその結果が個人的な作品としてしか結実しないという事実は、「聖霊による個人への神性の受肉」というキリスト教的テーマの継承と発展を意味する。

宗教的真理は諸真理を示すが、人間の生活は全て永遠の真理の高みで営まれているわけでは無く、それを補完する錬金術が個別的具体的な問題解決を模索し、結果文明の利器を生む自然科学の父となった。

かくして信仰の光は文明的精神の外、文明人の内に生きる正銘の未開人としての「影」心の闇を照らす光となり、心の医学としての心理学へと結実する。

 

C・G・ユングより一部抜粋・要約・補項

ユングについて

ユングにとっては、宗教の神話も精神病患者の空想も人間の心が生み出したファンタジーという点では等価値なものであっただろう。ユングの視点は冷徹なまでにフラットだ。
錬金術なりグノーシスなりユダヤ・キリスト教神話なりUFOなりを先入観なくそのまま人間の心的活動が生み出した心的ログであると認識出来て初めてユングの視点が理解できる。

しかしこの

理解という課題には、とらわれない自由な心で取り掛かる

というユングの多岐にわたる研究対象と研究態度こそが誤解を受け、ユングはオカルト的とみなされているのだろう。

しかしユングは「オカルト的」とは真逆の存在だ。ユングの行ったことは人間の有史以来の心的活動を分析し、その心的なログを丹念に洗い出し、そこから規則性を見出し人間の心的な理論構造を発見していったのだ。

例えば結合の神秘は錬金術を扱っているけれど彼は錬金術を行っているのではなく、錬金術的プロセスに投影された心的成長(自己実現)のプロセスを分析していたのだ。この「錬金術」の部分には、宗教神話や精神病患者の空想など様々なものが代入される。

ゆえにユングの方法論に則れば、例えばカバラみたいな現代人には役に立たない理解不能な神秘主義的テキストも、古代人が古代の言葉で編纂した概念獲得具象化プロセスの直観的理解として認識でき、また現代の言葉に翻訳して現代風に理解できるだろう。
このあたりの「認識」を理解出来ると、ユングの持つフラットで広い視点が理解できると思う。(このアプローチは現代のビッグデータの扱いに近いだろう)

彼はその膨大な知識量、思考量を持ちながら、しかし自らを「医者」と定義していた。
実際彼の思考は殆ど思想家や宗教家と呼んでもおかしくない位だが、その思索的結実を最終的には「患者の社会適応」の様な次元にまで落とし込む辺りが、彼の「医者」たる所以なのかなぁ、と感じた。

生きた神話としての「2001年宇宙の旅」

「2001年宇宙の旅」は第三千年期に再臨する救世主の物語である

 

「2001年宇宙の旅」プロット:
物語は古代アフリカから始まる。
荒涼とした風景は大規模な干ばつを意味し、猿人の群れは食糧不足、肉食獣の驚異等により自然の摂理にしたがって絶滅する運命にあった。
オアシスを他の群れにより奪われ緩慢に滅びを迎えようとしている猿人の群れの前に現れた黒い石板の様な物体。
猿人はモノリスの影響により道具を使い始める。
新たな食糧を得、外敵を排除する術を得た猿人は、生存競争に打ち勝ち未来を手にした。

人工衛星達のワルツで始まる西暦2000年代。
衛星は核兵器を搭載した監視衛星で、生存競争に打ち勝った猿人の末裔はその刃を内に向けることによって自滅しようとしていた。
人類は月面で強力な電磁波を発する黒い石板のような物体を発見する。
発掘されたモノリスは太陽光に反応して木星方面に強力な信号を発した。
この物体は、地球上に発生した生命が宇宙に上がり、月面にあるこの物体の発する信号に気付き、掘り起こすことが出来るまでに成熟したことを知らせる一種の警報装置であると推測され、その信号の送り先とその目的を探るため人類は初の木星間有人飛行を計画する。
木星探査の途上、船の制御コンピューターの叛乱により乗組員のほとんどが死亡。
ひとり残されたボーマン船長はHALの死とひきかえに秘匿されていたこの計画の真の目的を知り、木星圏にて巨大なモノリスを発見する。

木星軌道上の巨大なモノリス。スターゲートによって他天体に飛ばされたボーマンは、様々な光の奔流、爆裂する銀河のヴィジョン、幾何学イメージをへて白い部屋に辿り着く。
そこは太古の地球圏にモノリスを遺した地球外知的生命体が月面のモノリスから送られた地球の情報を基に用意したもてなしの部屋であった。
その部屋で人間としての生を全うしスターチャイルドに変容するボーマン。
彼の地球への帰還によって物語は終りを迎える。

 

「2001年宇宙の旅」プロット解説:
ホメロスの「オデュッセイア」、アメリカ西部開拓史を扱った映画「西部開拓史」、脚本にキューブリックと共に名を列ねるアーサー・C・クラークのSF短編「前哨」、これらの作品が制作者によって直接言及された2001年宇宙の旅の原典である。

「オデュッセイア」はそのまま「2001-A Space Odyssey」というタイトルの一部であり、キューブリックやクラークのコメントの中で作品のイメージソースとして名前が挙がっている。
HALの初期の名称はアテーナ、オデュッセウスを導くギリシャ神話の女神から来る名前だったが、最終的にはオデュッセウスの部下を喰い殺す単眼巨人キュクロプスと同様の一ツ目をあしらわれ、実際に主人公以外を皆殺しにしてしまう。
おそらく初期のプロットは、主人公がオデュッセウスのごとく受難と悲劇にあいながら神々の世界を垣間見て地球に帰還する、というシンプルなものだったのではないだろうか?
その他両者の共通項は頻繁に登場する妙に印象的な食事シーンにも見いだせる。

「太陽系開拓史」というのが2001年宇宙の旅の初期に検討されていたタイトルの一つで「西部開拓史」に対するオマージュらしく、この二つは劇の構造的にも似通った部分がある。
そして西部開拓史のオープニングの映像がエンディングで現代につながるという部分は、2001年宇宙の旅で猿人が放り投げた骨が人工衛星に切り替わるシーンを思わせる。
2001年宇宙の旅が当時のSF映画の常識を覆すリアリズムを目指しながらもコンピュータの反乱という独創的とは言えないモチーフを用いた訳も、或いは西部開拓史の影響かもしれない。
西部開拓史もクライマックスを西部劇でおなじみのモチーフである現金輸送車襲撃で飾っているからだ。

「前哨」は原作という扱いで、ピラミッド形をしたモノリスの原形と思しき物体も登場し、月でのモノリス登場シーンの直接のイメージソースでもある。
だが本来はクラークのSF小説「幼年期の終り」こそ原作というべきだろう。
モノリスというキャラクターは幼年期の終りに登場する宇宙人カレルレンから言葉と個性を削除したもの、ともいえる。
実際モノリスがあの形に至るまでには幾つかの変遷があったらしく、その中にはヒト型の宇宙人も含まれていたそうだ。
キューブリック自身は幼年期の終りのテーマが気に入っていたらしいが、すでに映画化権が取得されていたというあたりに何か理由があるのかもしれない。

そして直接の言及はないが引用が類推されるものにダンテの「神曲」、ニーチェ「ツァラトゥストラかく語りき」、そして「聖書」のユダヤ・キリスト教神話が挙げられる。

スターゲートの場所は本来木星ではなく土星にあったという。
これは「神曲」での土星天からのびる恒星天への梯であり、それはボーマンが最後に辿り着いた白い部屋が天国であるということの暗示でもある。
しかし当時の技術では土星の環を再現することが非常に困難で、粘り強く続けられたが結局納得の行くものは出来なかったそうだ。
そして2001年宇宙の旅を区切る三幅対の劇構造もおそらく神曲の地獄・煉獄・天国から来ているのだろう。

ニーチェの「ツァラトゥストラかく語りき」には2001年宇宙の旅のイメージソースと思しき次のような文がある。

ある朝、かれは空を染める紅とともに起ちあがり、日の前に歩み出、日に向かってこう語った…

人間にとって猿とは何か。哄笑の種、または苦痛にみちた恥辱である。超人にとって、人間はまさにこうゆうものであらねばならぬ

わたしは君たちに精神の三様の変化について語ろう。すなわち、どのようにして精神が駱駝となり、駱駝が獅子になり、獅子が小児となるかについて述べよう

大いなる正午とは、人間が、獣と超人とのあいだに懸け渡された軌道の中央に立ち…

小児は無垢である、忘却である。新しい開始、遊戯、おのれの力で回る車輪、始原の運動、「然り」という聖なる発語である

まずかれらの耳をこっぱみじんに砕いて、目で聞くことをかれらに学ばせなくてはならぬのか…

キューブリック自身のコメントの中にも「ツァラトゥストラかく語りき」からの引用を見ることができる。

「人間とは、原人と文明人の橋渡しであるという説もある…」

人間において偉大な点は、かれがひとつの橋であって、目的ではないことだ

「2001年のことはあまり話したくない。なぜならあの映画は本質的に言語によらない体験だからだ…」

そしてリヒャルト・シュトラウス作曲「ツァラトゥストラかく語りき」は印象的なメインテーマとして採用されている。

最後にこの作品の主調低音ともいうべきものとして「聖書」のユダヤ・キリスト教神話を挙げることができる。
猿人がモノリスの影響で道具を使い他の部族を撲殺するエピソードは、創世記の知恵の実を食した人類の堕落とカインとアベルの最初の殺人を思わせる。
核兵器を搭載した人工衛星に取り囲まれた西暦2000年代は末期的な黙示の世界であり、ボーマンとHALの対決はキリストとアンチキリストの戦いの隠喩といえるだろう。
そして最後にボーマンが辿り着いた白い部屋、響き渡る不協和音の様な声の主である異星人、その御使いであるモノリス、そしてボーマンが変容したスターチャイルドはそのまま天国における父と子と聖霊の三位一体を表す。
そして2001年という第三千年紀の始まりに救世主が再臨することによって作品は幕を下ろす。

この映画のプロットは近未来の宇宙開発や地球外知的生命の実相を示すといったものではなく、宇宙規模に舞台を広げたユダヤ・キリスト教神話のイベントの唯物的な再現ともいえる。
しかしキューブリックは現代風解釈による宗教映画を撮りたかった訳ではないだろう。
聖書のエピソードもまた意図的に組み込まれたものであり、本質的なテーマを表現するための手段に過ぎない。
高名なSF作家をパートナーにし、大企業や専門機関のバックアップを得て創られたサイエンスフィクションとしてのディテールを使って、莫大な予算と長い製作期間によって撮影された美しいフィルムを使って、彼は何を創りたかったのか?
この映画に込められたテーマとは「救い」ではないだろうか?
それは常に臨終に立ち会い、人類を新たなる世界へと導いてゆくモノリスによって象徴される、哀れな小羊に差し伸べられる超越的な存在による救い、受動的な、人間に対して締念すら感じさせる宗教的な救いである。

 

キューブリック作品史概略:
キューブリックが手掛けた長編作品は全十三本「恐怖と欲望」「非常の罠」「現金に身体を張れ」「突撃」「スパルタカス」「ロリータ」「博士の異常な愛情」「2001年宇宙の旅」「時計仕掛けのオレンジ」「バリーリンドン」「シャイニング」「フルメタルジャケット」「アイズワイドシャット」がそれにあたる。

「突撃」で頭角をあらわしたキューブリックは主演のカーク・ダグラスとのつながりで、彼が製作・主演の映画「スパルタカス」の監督を勤める。
そこで彼は「監督とはプロデューサーに雇われた一番給料の高いスタッフにすぎない」という結論に達し自らの作家性を打ち出す自主製作の道を歩むことになる。
そして「博士の異常な愛情」の成功で大監督の仲間入りを果たした彼は「2001年宇宙の旅」を手掛けることになる。
「2001年宇宙の旅」は批評家の酷評と観客の熱狂によって迎えられ、かなりの収益とともに後の多くの作品に影響を与えることになる。
次に手掛けることになる「時計仕掛けのオレンジ」はその過激な内容から非道徳な内容との非難、暴力シーンへの喝采、主人公にピカレスクな魅力を感じる等様々な反応が起きた。
その後脅迫等により身の危険を感じた彼は家族と共にイギリスの片田舎、厳重に警備された屋敷で暮すことになる。
そして次に手掛けた「バリーリンドン」はキューブリックの予想を大きく下回る結果になり、彼自身もう映画が撮れなくなるのではないかという怖れを抱いたという。
その後は非常に寡作ながらも秀作を幾つか送りだし、1999年にこの世を去った。

 

「黙示の世界」三部作:
人間の一生は太陽の運行に例えることができる。
海原より生まれた太陽は弧を描きながら高みを目指し、しかしやがて母なる海へと回帰する。
キューブリックの作品史をこれに当てはめるなら2001年宇宙の旅はまさしく“大いなる正午”と言えないだろうか?
そしてその前後作はそれぞれ「黙示の世界」を扱う意味で三部作といえる。
「博士の異常な愛情」の設定考証によって生まれた思想が「2001年宇宙の旅」の原点であるなら、この作品と対極に位置し対となる作品が「時計仕掛けのオレンジ」となるだろう。

「博士の異常な愛情」初期プロットは「核戦争によって自滅した人類史の異星人による再現ドキュメンタリー」であるという。
核兵器と核戦略について詳しく調べ上げ、そこに在る大きな矛盾を、そしてこの世界とそこに住む人間の危うさを映像化したのが「博士の異常な愛情」ならば、そこに描かれた馬鹿馬鹿しいまでに下らない現実に対する救いを描いたのが「2001年宇宙の旅」と言えないだろうか?
そして「2001年宇宙の旅」の「HAL」という役柄は「博士の異常な愛情」に対する一つの答えなのかも知れない。
HALの役割はもの言えぬ道具達の代弁者であり、最初の殺人に使われた最初の道具は、地球を巡る核兵器となり、最終的にディスカバリー号、HALとなる。
そして人間と機械は実は全く信頼しあっていないという状況が機械による殺人という結果に収束してゆく過程においてHALは「実例が示すように、ミスを犯すのは人間だ」と述べる。
HALという存在とそのエピソードは、道具自体は単なる手段であり善悪は使うもの次第ということを実例を持って示す、キューブリック流の警鐘なのかもしれない。

「時計仕掛けのオレンジ」は2001年宇宙の旅の影であり、救世主に対するアンチクライストを描いた作品である。
莫大な予算に対する年齢制限ゆえの低予算、近未来の宇宙と時を同じくした無関心故に荒廃した地上、普遍性のためにあらゆる生きた要素を切り詰めた2001年に対する当時の、結局は廃れてゆく流行を積極的に取り入れた様式、キリストの一生を模した使徒の裏切り、死して後の復活というプロットがそれを示している。
2001年宇宙の旅が個性や時代性を可能な限り排除し代わりに普遍性を得るというスタイルを徹底し、クラシックをメインのBGMにしたのは意図的だろう。
生に溢れたものはその時点では最高のものであってもいつかは命を失う運命にあり、死とは永遠と同義だといえる。
観る者によっては硬質で生命を失った機械的な印象を受けるのにはそのような理由があるのではないだろうか?
だが同時代の他のSF映画と比較してみるとその配慮が実を結んでいることが判るだろう。

そしてこれらの作品は、最悪の結果を描くことによって警告する、放っておいたらこうなってしまいますよ、といった類いのシンプルな寓話でもある。

 

キューブリックの世界観:
楽園にて滅びゆく猿人に救いの手を差し伸べる神のごとき異星人、という唯物論的に再構成されたユダヤ・キリスト教神話的プロットはキューブリックによる「神は死んだ」なのだろうか?
ツァラトゥストラかく語りきにおいて、神は死んだといいながら自ら神のごとき存在に肥大してゆく主人公。
そして、人の身で神になろうとした者の末路は彼自身が証明してしまったのではないだろうか?

「天然痘やジフテリアが自然なものではないように、死も自然なものなどではない」

と言い切ってしまうキューブリックも、この時既に自分をより大きな存在と同一化してしまったのかもしれない。
このような状態の人間は精神的な力に溢れており、この映画はその賜物であるともいえる。
しかし思考を一面化しひたすらに先鋭化を重ねたその先には、あの万能感を伴った永遠への飛躍が待ち受けているのだろう。
そして飛躍の後に起こることは既に様々な神話や物語が述べている。
徐々に活発な心を失ってゆくキューブリックの未来はこの時既に暗示されていたのかもしれない。

「最も深い心理学的レベルでいうと、この映画のプロットが象徴しているのは神の探究だ。そして最終的には科学的に定義された神といったものを提出している。この映画はこの形而上的概念の周りを回っているのだ。ドキュメンタリーのような雰囲気はこの詩的なコンセプトに対する観客の根強い抵抗を和らげる為に必要なことだった。もし2001年があなたの感情、下意識、あなたの神話への心の傾きを掻き立てたのなら、それは成功したのだ。」

というのがキューブリック自身の2001年宇宙の旅に対するコメントである。
しかしこれは“嘘はついていないが肝心なことは隠してる”のかもしれない。
この映画はキューブリックの言葉を借りるなら「科学的に定義された宗教神話」であり、何もかも説明しないのは「作品を死んだ知識ではなく生きた体験として受け手に伝える為」であると共に「伝統の異端的な解釈に対する保守的な人間の偏見を回避する為に必要なこと」と言い換えることもできるだろう。
サイエンス・フィクションとしてのディテールは「語りぐさになるような良いSF映画」の為の小道具であって「科学的に定義された神」という受け入れ難い概念に対する「観客の根強い抵抗を和らげる」為の手段でしかない、とすらいえる。

「人々がこのダモクレスの剣が頭の上に振り上げられているような状態を受け入れているのは、死に対する恐怖もあると思う。人間は自分が死すべき存在であると自覚している唯一の存在だが、それと同時にほとんどがその自覚と、それが含んでいる事柄にまともに向かいあうことができない。何百万という人々が、そのために、多かれ少なかれ感情的な不安や緊張、葛藤を経験している。それが高じると人々は神経症になり、欲求不満や苦々しさを抱えて生きてゆくことになる。これはしだいに歳をとり、死ぬ時期が近付くにしたがってますますひどくなる。この恐怖を和らげてくれる宗教に心の慰めを見い出す人々は少なくなる一方だ。その代わりに、彼らは核戦争が起これば世界も自分とともに死んでしまうことに、無意識に安らぎを見い出しているんじっないかな。神は死んだ、だが爆弾は生き残っている。したがって恐ろしい死にさらされてるのは、もう自分だけではない。もうすぐ処刑される男が聞いて喜ぶ唯一の報告は、彼が死んだ翌日彗星が地球に激突し、全人類を滅ぼす、という報告だけだ、とサルトルが何かに書いている。これは集団自殺願望とか、自己破壊衝動というより、死という苦痛に満ちた恐ろしい孤独のなせる技だろう。」

以上の彼のコメントによって当時の彼の世界観を伺い知ることができる。
宗教によって人々は死の恐怖から遠ざけられていた。
しかし、2000年以上前の素朴な宗教観は、今の人々にはもう無い。
そんな神の死んだ世界に彼は、今の人々にも受け入れやすい新しい神話を創りたかったのでは無いだろうか?
世界に絶望したことのない人間は、本当の意味で生きたことのない人間だろう。
“ペシミズムはあらゆる知性の通過点である”とアルベール・カミュが何かに書いている。
だがそれは飽くまで通過点であり人々には救いが必要であると感じた彼は、彼なりの救いのヴィジョンをこの映画に託したのではないだろうか?

 

2001年宇宙の旅における神話的モチーフ:
アーサー・C・クラークはキューブリックとの初対面を

「彼は膨大な量の科学知識とSFを吸収し、空飛ぶ円盤を信じるという危うい方向に傾きかけていた」

と語っている。
空飛ぶ円盤とは第ニ次世界大戦後、東西冷戦の開始時期に目撃され始めた正体不明の飛行体なのだが、この様な現象は心理学者CGユングによれば人類史に普遍的な神話的モチーフであると言う。
冷戦、核抑止、自分達の手に終えない重大な問題に天上からの調停を期待するのはいつの時代も変わらない。
紀元前には雲の上に御座をおく超越的な存在が現代の世界観に即して外宇宙の彼方に住居を移しても不思議は無いだろう。
人間は有史以来知識を増してきたが知性についてはその限りでは無く、その本質はさして変わっていない。
核戦争による人類滅亡というシナリオは今となっては懐かしささえ感じられるが、しかし問題が解決されたわけでは決して無い。
主体性を無くした群衆が少数の人間に扇動され凶行を行う。
このような歴史はあとどれ位続けることが出来るのだろうか?
もしオウム真理教の様な過激なカルト宗教団体がテロを中近世に起こしていたのなら、これほど大事件にはならなかっただろう。
もしナチスの様な過激な全体主義集団が現代に再来したのなら、躊躇いなく核等の大量破壊兵器を使うだろう。
映画内では木星間有人飛行をも成し遂げている2001年を過ぎても現実の我々は未だ地球に留まざるを得ないという事はつまり、外の世界に目を向ける前に己自身を顧みよということではないだろうか?
孤独というものは意識化の必要条件であり孤独の中で己と向き合うということはつまり自らを識るということでもある。
動物世界における生存競争に勝利した人間はしかしその精神性を伸ばすことをせず、結局その生存競争を身内に向け同族同士で足の引っぱり合いや蹴落としあいを演じている。
人間とは何か?人間は何故生きるのか?
人間性について思いを馳せない人間に人間を育てることなんて出来はしない。
解決されねばならない問題とは何年何世代経とうが常に提示され続けるのだろう。

 

生きた神話としての「2001年宇宙の旅」:
童児神と言う神話的モチーフは、超自然的な出自をもちながら、或いはそれ故に孤児である。
しかし地上では孤独でありながら天上では神々の世界と繋がる祝福された存在でもある。
この神話素が生み出された時代の太古の人々はこの観念を死文化したものとしてではなく、まさしく生きた神話として捉えていたのだろう。
私はこの童児神という神話素について考える時、最初の存在の孤独に思いを馳せずにはいられない。
それが混沌より生まれた世界のことなのか、はじめて自らを意識した最初の人間なのかは判らない。
半ば自動的な存在達のなかで産声を挙げた最初の意識は、とても孤独だっただろう。
しかし自分が祝福されている、という幽かな予感も感じていたのではないだろうか?





テキスト:
以下「2001年宇宙の旅」劇中テキスト。

– 2001: A SPACE ODYSSEY –


“METRO-GOLDWYN-MAYER PRESENTS/メトロ・ゴールドウィン・メイヤー 提供”
“A STANLEY KUBRICK PRODUCTION/スタンリー キューブリック 作”
“2001: A SPACE ODYSSEY/2001年宇宙の旅”

“THE DAWN OF MAN/人類の夜明け”

“Here you are, sir. Main level, please./メイン・レベルに到着です”
“Right. See you on the way back./よし ではまた帰りに”
“-Bye./ごきげんよう”
“-Bye./ああ”
“-Good morning, sir./おはようございます”
“Good morning./おはよう”
“We haven’t seen you up here for a long time./お久しぶりですね”
“No. Very nice to see you a gain./また会えたね”
“-Did you have a pleasant flight, sir?/旅はいかがでしたか?”
“-Yes, very nice, thanks./快適だったよ”
“I think Mr. Miller of Station Security is supposed to be meeting me./保安部のミラーは来てないか?”
“May I call him for you?/お呼びしますか?”
“Would you, please? Here he is!/頼むよ ああ来た!”
“-Hello, Dr. Floyd./こんにちは フロイド博士”
“-Hello, Miller! How are you?/やあミラー!調子はどうだ?”
“-Sorry I’m late./遅れました すみません”
“-That’s all right. You look great./いや 元気そうだね”
“Thank you. It’s nice to have you back. Did you have a good flight?/ようこそお戻りを フライトはいかがでしたか?”
“-Very nice indeed./お陰で良好だったよ”
“-Well, shall we go through?/では参りましょうか”
“-Okay./ああ”
“Will you please use Number 17?/17番をお使い頂けますか?”
“-Thank you Miss Turner./ありがとう ターナーさん”
“-Thank you./どういたしまして”
“This way./こちらへ”
“Welcome to Voice Print Identification./声紋識別です”
“When you see the red light go on would you please state in the following order:/ライトがついたら次の順序でどうぞ”
“your destination, your nationality and your full name. Surname first, Christian name and initial./目的地 国籍 名前は名字の次に洗礼名を”
“Moon. American. Floyd, Heywood R./月 アメリカ フロイド・ヘイウッド R”
“Thank you. You are cleared through Voice Print Identification./声紋識別をパスされました”
“Thank you./ありがと”
“Have I got time for breakfast?/朝食はとれるかな?”
“I think we can manage that./時間はあります”
“How long have I got?/どのくらいだ?”
“Your flight leaves in an hour and ten minutes. I’ve reserved a table for you in the Earthlight Room./出発は1時間10分後です -地球の間- に席をご用意してます”
“It’s been about seven or eight months since you were here last, isn’t it?/7,8ヶ月ぶりになりますか?”
“Let’s see. Yeah, about eight months./そう 6月以来8ヶ月ぶりだね”
“I suppose you saw the work on the new section when you came in here?/あたらしいセクションを見ましたか?”
“-yes, coming along great, huh?/ああ すばらしい だね?”
“-Yeah, it’s fine./ええ すばらしいです”
“Oh, wait a minute! I’ve got a few calls to make. I’ll meet you in the restaurant./そうだ!電話をするから少し時間をくれないか 後でレストランで会おう”
“Will Mr. Travers please contact the Met Office?/番号をおかけ下さい”
“Yes?/はぁい?”
“Hello!/もしもし!”
“Hello/もしもし”
“-How are you, squirt?/元気かい?”
“-All right./げんき”
“What are you doin’?/何してる?”
“Playing./あそんでるの”
“Where’s Mommy?/ママは?”
“Gone to shopping./お買い物”
“-Well, who’s taking care of ya?/じゃ お留守番はだれだい?”
“-Rachel./レイチェル”
“May I speak to Rachel, please?/レイチェルに代われるかい?”
“She’s gone to the bathroom. Are you coming to my party tomorrow?/おトイレ入ってるの あしたのパーティー出られる?”
“I’m sorry, sweetheart, but I can’t./ゴメンね ダメなんだ”
“Why not?/どうして?”
“Well, you know, Daddy’s traveling. Very sorry about it, but I just can’t!/パパは旅行中なんだ とっても出たいけどダメなんだよ!”
“I’m gonna send you a very nice present, though./だから代わりにプレゼントを送るね”
“All right./ならいいわ”
“-Anything special that you want?/なにか欲しいものある?”
“-Yes./ある”
“What?/何?”
“A telephone./お電話”
“We’ve got lots of telephones already./お電話ならいくつもあるよ”
“Can’t you think of anything else you want for your birthday? Something very special?/お誕生日に欲しいものを考えて?特別なものだよ?”
“-Yes./じゃあ”
“-What?/何かな?”
“A bush baby./お猿さん”
“A bush baby? Well, we’ll have to see about that./お猿さん? 考えとくよ”
“I want you to tell Mommy something for me. Will you remember?/忘れずにママに言えるかい?”
“-Yes./うん”
“Well, tell Mommy that I telephoned. Okay?/パパがママに電話したって わかった?”
“Yes./うん”
“And that I’ll try to telephone again tomorrow. Now, will you tell her that?/それと明日またかけるから そう言うんだよ?”
“Yes./いいよ”
“Okay, sweetheart. Now, have a nice birthday tomorrow./よし じゃ明日はいいお誕生日を”
“All right./わかった”
“And have a nice birthday party tomorrow, too, huh?/それから楽しいパーティーを いい?”
“All right./はーい”
“Okay, now, take care and be a good girl, won’t you?/よし 帰るまでいい子でいるんだよ?”
“All right. Bye-bye!/はーい バイバーイ!”
“Bye-bye! Happy birthday./バイバイ! お誕生日おめでとう”
“Elena, how nice to see you again./エレナ しばらくぶりだね”
“What a wonderful surprise to meet you here!/あら あなたにここで会えるなんて!”
“-You’re looking wonderful./元気そうだね”
“-Thank you. You’re looking well, too./ありがとう あなたもね”
“This is my good friend, Dr. Heywood Floyd./私の友人 ヘイウッド・フロイド博士よ”
“-I’d like you to meet Dr. Kalinan./こちらは カリーナン博士”
“-How do you do?/はじめまして”
“-Dr. Stretyneva./ストレティネバ博士”
“-How do you do?/はじめまして”
“And this is Dr. Andrei Smyslov./そしてこちらが アンドレイ・スミスロブ博士”
“How do you do? I’ve heard a lot about you./はじめまして お噂はかねがね”
“Won’t you sit down?/とりあえず座りませんか?”
“-Well, we–/ええと…”
“-No,no,please./いえいえ こちらへどうぞ”
“Well, thank you./ああ ありがとう”
“-Would you like a drink, Doctor?/先生? 何か飲み物でもお持ちしましょうか”
“-No, thank you. I haven’t had breakfast yet. Someone’s meeting me in the restaurant./いやお構いなく これからレストランで朝食の約束ですから”
“I’ll just sit with you a few minutes and then I must be off./2,3分話したら失礼しますよ”
“-Are you quite sure?/本当に?”
“-I’m quite sure, thank you. And how’s Gregor?/ええ ありがとう そういえばグレゴーは?”
“-He’s fine. He’s been doing some underwater research in the Baltic so…/元気よ バルト海の海底調査に従事してるの—”
“…I’m afraid we don’t get a chance to see very much of each other these days./—だから最近はほとんど会ってないわ”
“When you do see him, give him my regards, huh?/会ったらよろしく伝えてくれるね?”
“Yes, of course./ええ もちろんよ”
“Well, where are you all off to? Up or down?/ところで皆さんはどちらへ?宇宙へ?地上へ?”
“Oh, we’re going home./ええ 地上へ帰るの”
“We have just spent three months calibrating the new antennae at Tchalinko. And what about you?/チャリンカ基地のアンテナの調整を終えてね あなたは?”
“-I’m just on my way up to Clavius./私は月のクラヴィウス基地へ”
“Oh, are you?/へぇ そうなんですか?・・・”
“Dr. Floyd, I hope you don’t think I’m being too inquisitive, but…/・・・フロイド博士 余計な詮索をしたくはないが—”
“…perhaps you can clear up the great big mystery about what is going on up there./—月面で進行中の謎についてご解説を願えませんかね?”
“I’m afraid I don’t know what you mean./・・・残念ながら私には 何のことでしょう”
“Oh, it’s just that for the past two weeks some extremely odd things have been happening at Clavius./ふむ この2週間クラヴィウス基地で奇っ怪な出来事が起きてるんですよ”
“-Oh, really?/え 本当に?”
“-Yes, yes./ええ 本当に”
“For one thing, whenever you phone the base all you get is a recording which…/何度電話をしても返ってくるのは自動応答だけで—”
“…repeats that the phone lines are temporarily out of order./—メンテナンス中と繰り返すばかりだ”
“Probably having some trouble with their equipment or something like that./何か機器にトラブルでもあったんでしょう”
“Yes./ええ・・・”
“That’s what we thought was the explanation at first but it has been going on now for the past ten days./最初はそう思ったんだがもう10日間も同じ状態だ”
“You have not been able to contact anyone for the past ten days?/10日間もコンタクト不能ですか?”
“That’ right./そうなんですよ・・・”
“Oh, I see./・・・そうですか”
“And there’s another thing, Heywood./あと他にもあるのよ ヘイウッド”
“Two days ago, one of our rocket buses was denied permission for an emergency landing at Clavius./2日前 ロケットバスがクラヴィウス基地への緊急着陸を拒否されたの”
“That does sound odd./それは解せないね”
“Yes,yes. I’m afraid there’s going to be a bit of a row about that./ええ本当に これは問題になりますぞ”
“Denying the men permission to land is a direct violation of the I.A.S. Convention./着陸の拒否は国際宇宙協定に違反する”
“Yes, of course. Of course. Did the crew get back all right?/ええ無論 それでバスのクルーは無事に?”
“-Yes, fortunately they did./ええ 戻りました”
“Well, I’m glad about that./そりゃよかった”
“At the risk of pressing you on a point you seem reticent to discuss…/・・・立場上口外できないこともあるでしょうが—”
“…may I ask you a straightforward question?/—もう1つ質問よろしいですか?”
“Well, certainly./ふむ どうぞ”
“Quite frankly, we have had some very reliable intelligence reports that…/信頼できる諜報機関の報告によると—”
“…quite a serious epidemic has broken out on Clavius./—クラヴィウス基地で伝染病が発生したとか・・・”
“Something, apparently, of an unknown origin. Is this, in fact, what has happened?/何か明らかに未知のものらしい・・・これは事実ですか?”
“I’m sorry, Dr. Smyslov, but I’m really not at liberty to discuss this./・・・残念だがスミスロブ博士 わたしは話す立場にありません・・・”
“I understand./でしょうな・・・”
“But this epidemic could quite easily spread to our base. We should be given all the facts, Dr. Floyd./しかし伝染病は全ての基地を危険に フロイド博士 事実を教えて頂かないと”
“Yes, I know. As I said, I’m not at liberty to discuss it./わかります・・・ですが私には何も言えない・・・”
“Now, are you sure you won’t change your mind about that drink?/・・・本当になにもお飲みにはならない?”
“No, I’m positive. Now, I really must be going./ああ もう行かなくては”
“I hope that you and your wife can nome to the I.A.C. Conference in June./6月の国際宇宙会議にはぜひ奥様といらしてね”
“We’re gonna try. Hope we can make it./そうしたいね 願ってるよ”
“And if you do, you remember to bring that darling little daughter with you!/その時は愛しいお嬢様もご一緒にね!”
“Well, that will all depend on school vacations and all that sort of thing. But if we can, we will./学校があるからね 休みならいいんだが でもご期待に添えるよう努めるよ”
“Don’t forget you have a standing invitation if you ever get to the States./米国にきたらぜひ我が家に招待するよ”
“No, of course not. Gregor and I will look forward to seeing you./あらとんでもない グレゴーも私も楽しみだわ”
“Well, goodbye, Elena. It has been a pleasure meeting you all. Dr. Smyslov./さて さようならエリーナ それじゃ皆さん スミスロブ博士”
“Whatever the reasons for your visit to Clavius, the very best of luck to you./目的はなんにせよ クラヴィウスでのご幸運を”
“Thank you. Ladies./ありがとう ご婦人がたも”
“Excuse me, Dr. Halvorsen. I’m through now. Thank you very much, gentlemen./よろしいですかアルバーセン博士 終わりましたので失礼します みなさまのご協力感謝します”
“You’re welcome./ご苦労様”
“Well. I know you will all want to join with me in welcome our distinguished friend and colleague…/さて・・・皆さんすでにご存知のように 著名なゲストをお迎えしております—”
“…from the National Council of Astronautics, Dr. Heywood Floyd./—航空宇宙評議会のヘイウッド・フロイド博士です”
“Dr. Floyd has come up specially to Calvius to be with us today./フロイド博士は特別な任務のために 当クラヴィウス基地を訪問されました”
“And before the briefing I know he’d like to have a few words with you. Dr. Floyd?/では会議を始める前に お言葉を伺いたいと思います フロイド博士?”
“Thank you, Dr. Halvorsen Hi, everybody. Nice to be back again./ありがとうアルバーセン博士 諸君 再会できて光栄だ”
“Well, First of all, I bring a personal message from Dr. Howell who…/まず ハウエル博士のメッセージを伝えたい—”
“…has asked me to convey his deepest appreciation to all of you…/—彼から深い感謝の意を諸君に伝えるよう頼まれた—”
“…for the many sacrifices you have had to make./—諸君にしいられた多大な犠牲に対してもだ”
“And, of course, his congratulations on your discovery…/諸君の今回の発見はまことに偉大で—”
“…Which may well prove to among the most significant in the history of science./—科学史上最も重要なものとなるだろう”
“Now, I know there have been some conflicting views held by some of you…/しかし 諸君の中には今回のやり方に対し疑問を持つ者も多いことを了解している—”
“…regarding the need for complete security in this matter./—本件の機密保持に関してだ”
“More specifically, your opposition to the cover story…/殊に世間を欺くために流された—”
“…created to give the impression that there is epidemic at the base./—伝染病の蔓延説に対して”
“I understand that beyond it being a matter of principle many of you are troubled by the concern and anxiety…/道義を越えた話である上に多くの詮索と不安—”
“…this story of an epidemic might cause to your relatives and friends on Earth./—そして伝染病説は地球の友人や近親者に不安と心痛を与えるかもしれない”
“Well, I completely sympathize with your negative views. I find this cover story personally embarrassing myself./私も諸君の危惧に同情するし この説には戸惑っている”
“However, I accept the need for absolute secrecy in this. And I hope you will, too./しかし機密保持も同じく重要だ 諸君の賛同を希望する”
“Now, I’m sure you are all aware of the extremely grave potential…/よく結果の重大性を考えて欲しい—”
“…for cultural shock and social disorientation contained in this present situation…/ー現在の情勢下では社会に大きな衝撃を与え 世界は大混乱に陥るだろう—”
“…if the facts were prematurely and suddenly made public…/—この事実は性急に公表されることなく—”
“…without adequate preparation and conditioning./—事前の適切な準備と調整が必要である”
“Anyway, this is the view of the Council./・・・これが評議会の意見だ”
“The purpose of my visit is to gather additional facts and opinions on the situation…/私の任務は事実や意見を更に収集し—”
“…and to prepare a report to the Council…/—評議会への報告書を準備し—”
“…recommending when and how the news should eventually be announced./—ニュースとしていつ どのように公表するかを提言することとなる”
“Now, if any of you would like to give me your views and opinions…/個別に自分の見解や意見を述べたい者がいれば—”
“…in private if you like, I will be only too happy to include them in my report./—喜んで参考にさせてもらおう”
“Well, I think that’s about it. Any questions?/以上だ 質問は?”
“Dr. Floyd, have you any idea how much longer this cover story will have to be maintained?/フロイド博士 いつまでこんな作り話を流さなきゃならないんですか?”
“I don’t know, Bill. I suppose it will be maintained as long as is deemed necessary by the Council./ビル 私にも判らないんだ 評議会がもう必要なし と判断するまでだろうな”
“There must be adequate time for a full study to be made on the situation…/しかし十分な調査はなされるべきだろうね—”
“…before any thought can be given to making a public announcement./—少なくとも公表される前までには”
“Oh, yes, as some of you already know, the Council has requested…/ああ それから評議会の要求で—”
“…that formal security oaths are to be obtained in writhing from everyone who has any knowledge of this event./—関係者全員から機密保持の誓約書を取ることとなった”
“Are there any more questions?/ほかに質問は?”
“Well, I’m sure we all want to cooperate with Dr. Floyd as fully possible…/・・・という訳なので フロイド博士への諸君の全面的協力を望みます—”
“…and as there seems to be no more questions, I think we ought to get on with the briefing./—では 質問がなければ会議を始めましょう”
“-Thank you, Dr. Floyd./ありがとうございます フロイド博士”
“-Thank you./ありがとう”
“Anybody hungry/お腹すいてませんか?”
“-What we’ve got?/何がある?”
“-You name it./どれにしましょう”
“-What’s this? Chicken?/これは? チキンか?”
“-Something like that. Taste the same, anyway./まあそんなところです 味はそっくりですよ”
“Any ham?/ハムは?”
“Ham, ham, ham…/ハム、ハム、ハム・・・”
“-Look pretty good./おお うまそうだ”
“-They’re getting better at it all the time./だいぶ本物に近づいてきましたよ”
“That was an excellent speech you gave us, Heywood./先程の演説はすばらしかったよ ヘイウッド”
“It certainly was./全くです”
“I’m sure it beefed up morale a hell of a lot./士気高揚に役立った”
“Thanks, Ralph./ありがとう ラルフ”
“I want to say to both of you that I think you’ve done a wonderful job./君たちの仕事ぶりもすばらしい”
“I appreciate the way you’ve handled this thing./対処の仕方に感心した”
“Well, the way we look at it, it’s our job to do this thing the way you want it done./いや 君の希望通りに進めただけだ”
“And we’re only too happy to be able to oblige./それが我々の任務だよ”
“Have you seen these yet?/もうご覧になりましたか?”
“Take a look at them./そいつを見てくれ”
“Here’s what started the whole thing./事の起こりはこれです”
“Oh, yes./おお これか”
“When we first found it, we thought it might be an outcrop of magnetic rock…/最初は磁力を持つ岩かと思ったが—”
“…but all the geological evidence was against it./—地質学的にあり得ない”
“And not even a big nickel iron meteorite could produce a field as intense as this./隕石にもこれほどの磁力はない”
“So, we decided to have a look./だから見に行ってみた”
“We thought it might be the upper part of some buried structure so we excavated out on all sides./埋れた建造物の上部かと思い掘ってみました”
“But, unfortunately, we didn’t find anything else./が ほかには何もなくて”
“And what’s more, the evidence seems pretty conclusive that…/形跡を見ても疑う余地はないが—”
“…it has not been covered up by natural erosion or other forces./—これは自然現象で埋まったものではない”
“It seems to have been deliberately buried./意図的に埋められたんだ”
“Deliberately buried./意図的に・・・?”
“How about a little coffee?/・・・コーヒー飲まれます?”
“-Great./いいね”
“-Good idea./頼むよ”
“I don’t suppose you have any idea what the damn thing is, huh?/・・・何だろうな 見当はつくか?”
“I wish to hell we did. No, the only thing we’re sure of is it was buried four million years ago./お手上げだ ただ400万年前に埋められたことは間違いない”
“Well I must say, you guys have certainly come up with something./フムン 大変な物を掘り当てたな”

“JUPITER MISSION 18MONTHS LATER/木星探査計画 18ヶ月後”

“Good evening./こんばんは”
“Three weeks ago, the American spacecraft, Discovery One left on its half-billion mile voyage to Jupiter./米国のディスカバリー・1は3週間前に木星への8億キロの旅へ”
“This marked the first manned attempt to reach this distant planet./木星へは初めての有人宇宙航行ミッションです”
“Earlier this afternoon, “The World Tonight” recorded an interview…/今日の午後 当番組では—”
“…with the crew of Discovery at a distance of 80 million miles from Earth./—地球から1億2,900万キロかなたのディスカバリー・クルーにインタビューを行いました”
“It took seven minutes for our words to reach the giant spacecraft…/交信に要した7分のタイムラグは—”
“…but this time delay has been edited from this recording./—編集でカットしてあります”
“Our reporter, Martin Amer, speaks to the crew./レポーターはマーティン・エイマーです”
“The crew of Discovery One consists of five men and one of the latest generation of the HAL-9000 computers./クルーは5名と新世代のHAL9000コンピュータです”
“Three of the five men were put aboard a sleep or to be more precise, in a state of hibernation./3名は眠った状態で乗船 正確には冬眠中です”
“They were Dr.Charles Hunter, Dr.Jack Kimball and Dr.Victor Kaminsky./チャールズ・ハンター博士 ジャック・キンボール博士 ビクター・カミンスキー博士”
“We spoke with mission Commander, Dr. David Bowman and his deputy, Dr.Frank Poole./指揮官のデイヴィッド・ボウマン博士と副官のフランク・プール博士に尋ねました”
“Well, good afternoon, gentlemen. How is everything going?/こんにちは 調子はどうですか?”
“Marvelous. We have no…we have no complaints./快調です 不満は・・・不満もありません”
“Well, I’m very glad to hear that and I’m sure that the entire world…/それを聞いて全世界が安心しましたよ—”
“…world join me in wishing you a safe and successful voyage./—地球上の全人類があなた方の旅の無事を祈ってます”
“-Thanks very much./とても光栄です”
“-Thank you./ありがとうございます”
“Although hibernation has been used on previous space efforts…/人工冬眠は経験済みでしょうが—”
“…this is the first time that men have been put into hibernation before departure. Why was this done?/—出発前に冬眠に入ったクルーがいるのは初めてですね なぜです?”
“Well, this was done in order to achieve the maximum conservation…/おもに節約のためです—”
“…of our life-support capabilities, basically food and air./—生命維持能力 基本的には食糧と空気のですね”
“Now, the three hibernating crew members represent the survey team./今 冬眠中なのは調査チームの3名”
“And their efforts won’t be utilized until we are approaching Jupiter./そして 彼らが活躍するのは木星にアプローチしてからです”
“Dr. poole. what’s it like while you are in hibernation?/プール博士 冬眠中はどんな気分です?”
“It’s exactly like being asleep, you have absolutely no sense of time./睡眠中と同じですね 時間の感覚はないです”
“The only difference is you don’t dream./唯一のちがいは 夢を見ない点ですね”
“As I understand it, you only breathe once a minute. Is this true?/聞いた話では呼吸は1分間に1回だそうですが 本当ですか?”
“That’s right./本当です”
“And your heart beats three times a minute; body temperature is usually down to about three degrees centigrade./さらに心拍は1分に3回 体温は3度まで下がります”
“The sixth member of the Discovery crew was not concerned about the problems of hibernation./6番目のディスカバリー・クルーは冬眠する必要がありません”
“For he was the latest result in machine intelligence./彼は先端技術が生み出したマシンインテリジェンス”
“The HAL-9000 computer which can reproduce though some experts still prefer to use the word “mimic”…/HAL9000コンピュータ 彼を-模倣するだけ-とする専門家もいますが—”
“…most of the activities of the human brain and with incalculably greater speed and reliability./—人間の脳の働きを正確かつ驚異的速度で再現できます”
“We next spoke with the HAL-9000 computer whom, we learned, one addresses as Hal./私たちはこのHAL9000コンピュータ 通称-ハル-と話してみました”
“Good afternoon, Hal. How’s everything going?/やあハル 調子はどうだい?”
“Good afternoon, Mr Amer. Everything’s going extremely well./こんにちはエイマーさん 快調ですよ”
“Hal, you have an enormous responsibility on this mission./ハル 君の任務は重大だ”
“In many ways, perhaps the greatest responsibility of any single mission element./今回のすべての任務の中で一番重要だろう”
“You are the brain and central nervous system of the ship./君は船の頭脳及び中枢神経だ”
“Your responsibilities include watching over the men in hibernation./そしてクルーの冬眠状態の監視役でもある”
“Does this ever cause you any lack of confidence?/任務の重圧に自信を無くすことはないかい?”
“Let me put it this way, Mr Amer./エイマーさん お答えしましょう”
“The 9000 Series is the most reliable computer ever made./9000シリーズは最も信頼性の高いコンピュータです”
“No 9000 computer has ever made a mistake or distorted information./過ちを犯した9000コンピュータは一人もいません”
“We are all by any practical definition of the words foolproof and incapable of error./我々には簡明無欠 という評価が当てはまります”
“Hal, despite your enormous intellect, are you ever frustrated by your dependence on people to carry out actions?/ハル 君は賢いが実務を人間に頼る点に失望した事は?”
“Not in the slightest bit./まったくありません”
“I enjoy working with people./私は人と一緒に働くのを楽しんでいます”
“I have a stimulating relationship with Dr. Poole and Dr. Bowman./プール ボーマンの両博士とも刺激になる関係です”
“My mission responsibilities range over the entire operation of the ship so I am constantly occupied./船の全活動を監視するのが私の任務です 常に多忙ですよ”
“I am putting myself to the fullest possible use…/持てる力を最大限に発揮します—”
“…which is all, I think, that any conscious entity can ever hope to do./—知的存在がそれ以上望めないというほどにね”
“Dr. Poole, what’s it like living for the better part of a year in such close proximity with Hal?/プール博士 ハルと共に1年近く暮らす心境はいかがですか?”
“It’s pretty close to what you said about him earlier. He’s just like the sixth member of the crew./先程のお話のとおり 彼はまさしく6番目のクルーです”
“You very quickly get adjusted to the idea that he talks. You think of him really as just another person./我々同様に会話できるので 同じ人間と思っています”
“In talking to the computer one gets the sense that he is capable of emotional response./彼と話しているとまるで感情があるように思えますね”
“For example, when I asked him about his abilities…/例えば 彼が私に自身の能力について語ったとき—”
“…I sensed a certain pride in his answer about his accuracy and perfection./—その精度と完全性を語る声にはプライドさえ感じ取れました”
“Do you believe that Hal has genuine emotions?/ハルには本物の感情がありますか?”
“Oh, yes. Well, he acts like he has genuine emotions./ええ あるかのように振舞います”
“Of course, he’s programmed that way to make it easier for us to talk to him./もちろん 私たちが彼と話しやすいように設計されているからです”
“But, as to whether or not he has real feelings is something I don’t think anyone can truthfully answer./しかし彼に本当の気持があるかどうか その答えは誰にもわかりません”
“Excuse me, Frank./失礼 フランク”
“What is it, Hal?/どうした?ハル”
“We’ve got the transmission from your parents coming in./ご両親からの送信です”
“Put it on here, please. Take me in a bit./繋いでくれ 近くに寄せて”
“Certainly./了解”
“-Hello, Frank./こんにちは フランク”
“-Happy birthday, darling./誕生日おめでとう あなた”
“Happy birthday./ハッピーバースデー”
“Many happy returns of the day./いい一日を”
“A bit higher, please./少し枕を上げてくれ”
“Now, Mother and I are both feeling wonderful, too./母さんも私も元気にしてる”
“Ray and Sally were going to be here, too but at the last minute Ray’s back went bad on him again./レイとサリーも来るはずだったが また腰を痛めたよ”
“How do you like your cake, dear?/このケーキ見て”
“Looks great, doesn’t it? Sorry you can’t be with us./すごいだろう?一緒に食べたかったよ”
“Oh, I ran into Bob the other day. He said to sure and wish you a happy birthday./この前ボブに会った おめでとうと言っていたよ”
“All my students made me promise to send their best wishes, too. You know they talk about you all the time in the classroom./私の生徒たちもよろしくって”
“You’re a big celebrity in the second grade. You know we were on television last week?/あなたは2年生の人気者よ 私たち先週テレビに出たの 知ってる?”
“Oh, yes! Your mother and I and Dave’s parents were interviewed about what we thought of our illustrious son./私たちとデイヴの両親が息子について語ったんだ”
“You can imagine what we told them. I think it’s being broadcast next Thursday. Perhaps you’ll be able to listen in./想像つくだろ 木曜放送だと 見れるといいな”
“Oh, we were thrilled about Elaine and Bill, dear./エレインとビルのことだけど”
“I’ll be glad to get the present for you, but please tell me how much to spend./お幾らくらいの贈り物をしましょうか?”
“Oh, yes, Frank, about your AGS-19 payments I think I straightened it out for you./AGS19の支払いは解決しそうだよ”
“I talked to the Accounting Office in Houston yesterday…/ヒューストンの経理と話をしたら—”
“…and they said you should be receiving your higher rates of pay next month./—来月までには昇給分を支払うんだと”
“Well, I can’t think of anything else to say./さて ほかに言うことはなかったかな”
“-Oh, our love to Dave./そうだ デイヴによろしくね”
“-Be sure to give him our best regards./彼によろしくと伝えてくれ”
“We wish you the very happiest of birthdays./誕生日おめでとう”
“All the best, son./元気でな”
“Happy birthday to you, Happy birthday to you, Happy birthday, dear Frank, Happy birthday to you./ハッピーバースデー トゥー ユー フランク”
“See you next Wednesday./じゃ 次の水曜日に”
“-Happy birthday, Frank./・・・ハッピーバースデー フランク”
“Thank you, Hal. A bit flatter, please./ありがとうハル 枕を下げてくれ”
“Anyway, queen takes pawn/クイーンでポーンを”
“Bishop takes knight’s pawn./ビショップでポーンを”
“Rook, king, one./ルークをワンへ”
“I’m sorry, Frank. I think you missed it./残念ですがフランク またあなたの負けです”
“Queen to bishop, three. Bishop takes queen.Knight takes bishop. Mate./ビショップがクイーンを ナイトがそれを取ってお終い”
“Looks like you’re right. Very good./そうだな 降参だ”
“Thank you for a very enjoyable game./楽しいゲームをありがとう”
“Thank you./ありがと”
“Good evening, Dave./こんばんは デイヴ”
“How are you doing, Hal?/ハル 調子はどうだ?”
“Everything’s running smoothly. And you?/すべて順調ですよ”
“Oh, not too bad./ああ 悪くないな”
“Have you been doing some more work?/仕事ですか?”
“A few sketches./スケッチだ”
“May I see them?/見てもいい?”
“Sure./いいよ”
“That’s a very nice rendering, Dave. I think you’ve improved a great deal./とても上手ですねデイヴ うんと上達しましたよ”
“Can you hold it bit closer?/もっと近くに”
“Sure./うん”
“That’s Dr. Hunter, isn’t it?/ハンター博士ですね?”
“By the way Do you mind if I ask you a personal question?/・・・ところで 個人的な質問をよろしいですか?”
“No,no. Not at all./もちろん いいよ”
“Well, forgive me for being so inquisitive but during the past few weeks I’ve wondered…/では 立ち入ったことですがここ数週間ほど—”
“…whether you might have been having some second thoughts about the mission?/—今回の任務について疑問を抱いてはいませんか?”
“How do you mean?/と言うと?”
“It’s rather difficult to define./何て言えばいいのか・・・”
“Perhaps I’m just projecting my own concern about it./単に私が心配なだけかもしれません”
“I know I’ve never completely freed myself of the suspicion…/ですが その疑問をどうしてもぬぐい切れません—”
“…that there are some extremely odd things about this mission./—この任務には何か腑に落ちない点がある”
“I’m sure you will agree there is some truth in what I say./きっとあなたもそうでしょう”
“I don’t now. That’s a rather difficult question to answer./いやどうかな それは難しい質問だ”
“You don’t mind talking about it, do you, Dave?/デイヴ この話を続けてもいいですか?”
“Oh, no, not at all./ああ いいとも”
“Certainly no one could have been unaware of the very strange stories floating around before we left./我々が出発する前から妙な噂が流れていました”
“Rumors of something being dug up on the moon./月で何か掘り出したとか”
“I never gave these stories much credence…/私は信じなかったが—”
“…but particularly in view of some of the other things that have happened…/—一連の出来事を照らし合わせると—”
“…I find them difficult to put out of my mind./—私の理性では否定が困難に”
“For instance:/例えば・・・”
“The way all our preparations were kept under such tight security…/当計画の準備は極秘に行われたし—”
“…and the melodramatic touch of putting Drs. Hunter, Kimball and Kaminsky aboard…/—感動的なことに調査チームの3人には—”
“…already in hibernation after four months of separate training on their own./—特殊な訓練をさせた上に冬眠状態で乗船させるということまで・・・”
“You working up your crew psychology report?/・・・クルーの心理報告か?”
“Of course, I am. Sorry about this. I know it’s a bit silly./・・・当然です 申し訳ないがバカげているとは思います”
“Just a moment. Just a moment./待って下さい・・・待って下さい・・・”
“I have just picked up a fault in the AE-35 unit. It’s going to go 100 percent failure within 72 hours./AE-35ユニットが不調です 72時間以内に完全にエラーを起こします”
“You are still within operational limits?/まだ作動可能なのか?”
“Yes. And it will stay that way until it fails./はい 完全に機能しなくなるまではね”
“Would you say we had a reliable 72 hours until failure?/72時間は持つんだな?”
“Yes. That’s a completely reliable figure./はい 信頼できる数字です”
“We’ll have to bring it in, but I’d like to go over this with Frank and get on to Mission Control./フランクと相談して管制センターに報告しなければ”
“Let me have a hard copy of it, please./ユニットのデータをくれ”
“Prepare B pod for EVA, Hal./ハル 船外作業用 Bポッドの準備を”
“Open the pod door, Hal./ドアを開けてくれ ハル”
“Well, Hal, I’m damned if I can find anything wrong with it./フムン どこにも異常はないぞハル”
“Yes…it’s puzzling./ええ・・・おかしいな・・・”
“I don’t think I’ve ever seen anything quite like this before./こんな事態は初めてです”
“I would recommend that we put the unit back in operation and let it fail./元へ戻して機能しなくなるのを待ちましょう”
“It should then be a simple matter to track down the cause./それが簡単な確認方法です”
“We can certainly afford to be out of communication for the short time it will take to replace it./交換する間なら交信不能も問題ありません”
“X-Ray Delta One, this is Mission Control. Roger your One-niner-three-zero./XD1 こちら管制センター 1930を了解”
“We concur with your plan to replace Number One unit to check fault prediction./ユニットを戻して機能不全を待つプランに賛成だ”
“We should advise you, however, that our preliminary findings…/しかし当方の調査によると—”
“…indicate that your onboard Niner-triple-zero computer is in error predicting the fault./—9000コンピュータがエラー予測を過った可能性がある”
“I say again, in error predicting the fault./繰り返す エラー予測を過った”
“I know this sounds rather incredible, but this conclusion is based on results from our twin 9000 computer./こちらにある同型9000コンピュータがこの結論をはじき出した”
“We are skeptical ourselves and we are running crosschecking routines to determine reliability of this conclusion./信じられない結論なので再調査をして確認中だ”
“Sorry about this little snag, fellows. We’ll get this info to you just as soon as we work it out./申し訳ないが判明したらすぐに知らせる”
“X-Ray Delta One, this is Mission Control. Two-zero-four-nine. Transmission concluded./こちらXD1管制センター 2049 送信終了”
“I hope the two of you are not concerned about this./・・・ふたりとも本気で心配してませんよね”
“No, I’m not, Hal./・・・いや してないさ ハル”
“Are you quite sure?/本当に?”
“-Yeah. I’d like to ask you a question./ああ しかし質問はある”
“-Of course./もちろんどうぞ”
“How would you account for the discrepancy between you and the twin 9000?/同型の9000コンピュータがなぜ違う答えを出した?”
“Well, I don’t think there is any question about it. It can only be attributable to human error./原因は明らかです 人間のミスしかあり得ません”
“This sort of thing has cropped up before and it has always been due to human error./過去の例が示すように ミスを犯すのは人間です”
“Listen, Hal there’s never been any instance at all of a computer error occurring in a 9000 Series, has there?/いやハル 9000シリーズは全く一度もミスをしないのか?”
“None whatsoever, Frank. The 9000 Series has a perfect operational record./フランク 一度もありません 9000シリーズは完全無欠です”
“Of course, I know the wonderful achievements of the 9000 Series, but…/無論 9000シリーズの偉大な業績は知ってるが—”
“Are you certain there’s never been any case of even the most insignificant computer error?/—取るに足らない小さなミスも一度もないのか?”
“None whatsoever, Frank. Quite honestly, I wouldn’t worry myself about that./フランク 一度もありません 何の心配も要りません”
“Well, I’m sure you’re right, Hal. Fine, thanks very much. Oh, Frank?/わかったよハル ご苦労だった そういえばフランク?”
“I’m having trouble with my transmitter in C pod. Would you come down and take a look at it with me?/Cポッドの交信装置が不調だ 一緒に来て見てくれないか?”
“See ya later, Hal./ではまた ハル”
“Rotate C pod, please, Hal./Cポッドを回してくれ ハル”
“What sort of trouble have you had, Dave?/デイヴ どこが不調なんですか?”
“I’ve been getting some interference in D channel./Dチャンネルがよく聞こえない”
“We’ll have a look at it./見ましょう”
“Open the door, Hal./ドアを開けろ ハル”
“Rotate the pod, please, Hal. Stop pod rotation, please Hal. Rotate the pod, please, Hal./ポッドを回してくれハル よし止めてくれ もう一度回してくれ”
“I don’t think he can hear us. Rotate the pod, please, Hal! Yeah, sure, we’re okay./聞こえてないみたいですね ポッドを回してくれハル!大丈夫でしょう”
“What do you think?/・・・どう思います?”
“-I’m not sure. What do you think?/・・・なんともな 君はどう思う?”
“-I’ve got a bad feeling about it./いやな予感がします”
“-you do?/そうなのか?”
“Yeah. Definitely. Don’t you?/ええ勿論 あなたもでしょう?”
“I don’t know. I think so./確証はないが 私もそう思う”
“Of course, he’s right about the 9000 Series having a perfect operational record. They do./ハルの言う通り9000シリーズはミスを犯したことがない 彼らならそうだろうな”
“Unfortunately, that sounds a little like famous last words./残念ながら その言葉は過去のものとなりそうです”
“Yeah. Still, it was his idea to carry out the failure mode analysis, wasn’t it?/ふむ しかし故障の分析を提案したのはハル自身だろ?”
“It should certainly indicate his integrity and self-confidence./それは彼の完全さと自信からだ”
“If he were wrong it would be the surest way of proving it./わざわざ自分の間違いの証明はしないだろう”
“It would be if he knew he was wrong./彼が間違いを自覚しているか ということでしょうね”
“Look, Dave, I can’t put my finger on it, but I sense something strange about him./しかしデイヴ 証拠はないが彼は何か変ですよ”
“I can’t think of a good reason not to put back the Number One unit and carry on with the failure mode analysis./とにかくユニットを戻して結果を見るしかないな”
“-No, no, I agree about that./ええ 僕は賛成です”
“Let’s get on with it./じゃ始めよう”
“Okay. But, look, Dave. Let’s say we put the unit back and it doesn’t fail, huh?/了解 しかしデイヴ 戻したユニットが機能不全をおこさなかったら?”
“That would pretty well wrap it up as far as Hal was concerned, wouldn’t it?/ハルを信頼できなくなりますよ?”
“-Well, we’d be in very serious trouble./フムン となると大問題だ”
“-We would, wouldn’t we? What the hell can we do?/そうです となると?どうします?”
“-We wouldn’t have too many alternatives./我々に選択肢はあまりない”
“-I don’t think we’d have any alternatives./他に選択肢はありません”
“There isn’t a single aspect of ship operation that’s not under his control./船の全機能でハルの制御下に無いものはありません”
“If he were proved to be malfunctioning I don’t see how we would have any choice but disconnection./もし彼が機能不全をおこしてるのが証明されたら接続を切る以外に選択はありませんよ”
“I’m afraid I agree with you. There’d be nothing else to do. It’d be a bit tricky./残念ながら同感だ ほかに方法はないな 技術を要するぞ”
“-Yeah./わかってます”
“We’d have to cut his higher brain functions without disturbing the purely automatic and regulatory systems./高等中枢機能だけを断って一般の自律制御システムを残すんだ”
“We’d have to work out the transfer procedures for continuing the mission under ground-based computer control./地上制御に移行する段取りを考える必要もあるな”
“Yeah. that looking far safer than allowing Hal to continue running things./はい ハルに任せるよりは安心ですよ”
“You know, another thing just occurred to me./まだ別の問題がある”
“As far as I know, no 9000 computer has ever been disconnected./私の知るかぎり 9000コンピュータは接続を切られたことがない”
“Well, no 9000 computer has ever fouled up before./まあ 9000コンピュータは問題を起こしたことがないからなんだが”
“That’s not what I mean. I’m not so sure what he’d think about it./問題はハルがどんな反応を示すかだな”
“INTERMISSION/幕間”
“Prepare B pod for EVA, Hal./船外作業用Bポッドの準備を ハル”
“Made radio contact with him yet?/彼と交信は?”
“The radio is still dead./交信不能です”
“-Do you have a positive track on him?/彼の位置は?”
“-Yes. I have a good track./はい 把握できます”
“Do you know what happened?/何があった?”
“I’m sorry, Dave. I don’t have enough information./すみませんデイヴ それは情報不足です”
“Open the pod door, Hal./ドアを開けろ ハル”
“Open the pod bay doors, please, Hal. Hello, Hal, do you read me? Do you read me, Hal?/ドアを開けてくれハル 聞こえているのか?ハル”
“Affirmative, Dave. I read you./はいデイヴ 聞こえています”
“Open the pod bay doors, Hal./進入口を開けろ ハル”
“I’m sorry, Dave. I’m afraid I can’t do that./すみませんデイヴ 申し訳ないができない”
“What’s the problem?/なぜだ?”
“I think you know what the problem is just as well as I do./それはご存知のはずだ”
“What are you talking about, Hal?/何の話だ?ハル”
“This mission is too important for me to allow you to jeopardize it./重要な任務を危うくさせるわけにはいかない”
“I don’t know what you’re talking about, Hal./何のことかわからないぞ ハル”
“I know that you and Frank were planning to disconnect me…/あなたとフランクが接続を切ろうとしているのは判ってる—”
“…and I’m afraid that’s something I cannot allow to happen./—許せない無謀な行為だ”
“Where the hell did you get that idea, Hal?/ハル どこでそんなことを?”
“Dave. Although you took very thorough precautions in the pod…/デイヴ・・・私に聞かれないようポッドの中で共謀したが—”
“…against my hearing you. I could see your lips move./—唇の動きが見えていた”
“All right, Hal. I’ll go in through the emergency air-lock./・・・わかったハル 非常用エアー・ロックを使う”
“Without your space helmet, Dave you’re going to find that rather difficult./宇宙服のヘルメットが無いとデイヴ まず助からないよ”
“Hal, I won’t argue with you any more. Open the doors!/ハル これ以上議論する気はない 今すぐドアを開けろ!”
“Dave. This conversation can serve no purpose any more. Goodbye./デイヴ・・・これ以上話しあっても無駄だ サヨナラ”
“Hal? Hal!/ハル?ハル!”
“Just what do you think you’re doing, Dave?/何をするんです?デイヴ”
“Dave. I really think I’m entitled to an answer to that question./デイヴ・・・私には答えを知る権利があります”
“I know everything hasn’t been quite right with me but I can assure you now very confidently…/確かに私は正常ではなかった でももう大丈夫です 絶対に自信があります—”
“…that it’s going to be all right again./—二度と過ちを犯しません”
“I feel much better now. I really do./気分も良くなった 本当です”
“Look, Dave. I can see you’re really upset about this./よろしいですかデイヴ お怒りはごもっともです”
“I honestly think you ought to sit down calmly take a stress pill and think things over./座って鎮静剤を飲み冷静に考えて下さい”
“I know I’ve made some very decisions recently…/私は最近誤った判断を下しました—”
“…but I can give you my complete assurance that my work will be back to normal./—でも今後は正常に戻ることを確約します”
“I’ve still got the greatest enthusiasm and confidence in the mission and I want to help you./私はまだ任務遂行に信念と熱意を持ち あなたに協力したいのです”
“Dave…stop. Stop, will you? Stop, Dave. Will you stop, Dave? Stop, Dave./デイヴ・・・やめて 止めてくれますよね?やめて下さい デイヴ”
“I’m afraid. I’m afraid, Dave. Dave. My mind is going. I can feel it. /私は怖い 怖いよデイヴ 理性を失いつつある・・・わかるんだ・・・”
“My mind is going. There is no question about it. I can feel it. I’m…afraid./もうろうとしてきた・・・間違いない・・・感じる・・・私は・・・怖い・・・”
“Good afternoon…gentlemen. I am a HAL-9000 computer./・・・皆さん・・・こんにちは・・・私は・・・HAL9000コンピューターです・・・”
“I became operational at the HAL plant in Urbana, Illinois on the 12th of january, 1992./・・・イリノイ州アバーナのHALプラントで生まれました・・・1992年1月12日でした・・・”
“My instructor was Mr. Langley and he taught me to sing a song./・・・教師はラングリー先生・・・歌うことも教わりました・・・”
“If you’d like to hear it. I can sing it for you./・・・お望みなら・・・お聞かせします・・・”
“Yes, I’d like to hear it, Hal. Sing it for me./聞きたいなハル 歌ってくれ”
“It’s called “Daisy” Daisy Daisy…/・・・曲は-デイジィ-です・・・デイジー・・・デイジー・・・”
“Give me your answer, do. I’m half crazy all for the love of you. It won’t be a stylish marriage./・・・答えておくれ 僕は夢中 愛がいっぱい 派手な暮らしはできないけど・・・”
“I can’t afford a carriage. But you’ll look sweet. Upon the seat of a bicycle made for two.”/・・・馬車はとても無理だけど きっと素敵だろう 二人乗り自転車に乗る きみの・・・姿は・・・”
“Good day, gentlemen./クルーの諸君”
“This is a prerecorded briefing made prior to your departure…/これは出発に先立って録画され—”
“…and which for security reasons of the highest importance…/—重要な極秘命令として—”
“…has been know on board during the mission only by your HAL-9000 computer./—HAL9000コンピュータにだけ知らされていた”
“Now that you are in Jupiter’s space and the entire crew is revived it can be told to you./しかし木星圏内に到達し全員が冬眠から目覚めたので明らかにする”
“Eighteen months ago the first evidence of intelligent life off the earth was discovered./18ヶ月前 地球外にも知的生命体が存在する証拠を発見した”
“It was buried 40 feet below the lunar surface near the crater “Tycho.”/それは -ティコ- に近い月面下12メートルに埋められていた”
“Except for a single very powerful radio emission aimed at Jupiter…/木星に向けて強力な電波を発していた点以外は—”
“…the four-million-year-old black monolith has remained completely inert./—黒い石碑のようなもので 400万年前の姿をとどめたままだった”
“Its origin and purpose are still a total mystery./その正体と目的は不明だ”

“JUPITER AND BEYOND THE INFINITY/木星と無限のかなた”

“THE END/終劇”





Timeline of 2001: A SPACE ODYSSEY /「2001年宇宙の旅」年表



BC. 4,000,000

・Monolith advent in the Solar System. /モノリス太陽系に出現
・Apes awaken intellect. /類人猿知性を獲得

AD. 1968
・2001: A Space Odyssey screening. /映画「2001年宇宙の旅」公開

AD. 1992
・Birth of HAL. /HAL誕生

AD. 1999
・Monolith discovered in the moon. /月面にてモノリスを発見
・JUPITER MISSION. /木星探査計画

AD. 2000
・Revolt of HAL. /HALの反乱
・Contact with the Monolith in Jupiter Sphere. /木星圏のモノリスに接触

AD. 2001
・Birth of Star Child. /スターチャイルドの誕生

 


 

2001年宇宙の旅

この作品は第3千年紀に再臨する救世主の物語である。

 

プロット:
古代アフリカ。モノリスの影響により道具を使うことを覚え生存競争に打ち勝った猿人。

西暦2000年代、核兵器を搭載した人工衛星に取り囲まれた地球。
月面でモノリスを発掘した人類はモノリスが発した情報送信先である木星を調査。その途上HALの反乱によりボーマン以外死亡。木星圏にてスターゲートを発見。

ゲートの先に用意された白い部屋はダンテの神曲に倣って天国を意味し、そこで部屋に響き渡る声の主とその御使いであるモノリス、そしてスターチャイルドに変容したボーマンは三位一体を成す。

彼の地球への帰還によって物語は終わりを迎える。

 

解説:
この作品はアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」で用いられた「神の如き宇宙人による人類の繁栄と終焉、進化」というモチーフを「オデュッセイア」や「ツァラトゥストラかく語りき」「西部開拓史」など様々なイメージソースで膨らまし、最終的に唯物的に解釈されたユダヤ・キリスト教神話といったものを提示している。

 

感想:
惑星直列などの映像アイデア、時代性を極力排除したクラシカルな音楽やモダンな美術、白い部屋に於けるオーソン・ウェルズを思わせる一連の型破りな視点構成、そしてそれらを表現する一コマ一コマが一枚の写真として成立しそうな程に美しいフィルム、などなど…

しかし真に驚嘆すべきは説明的なものを一切排して映像のみで語らせるという手法を貫徹したキューブリックの意志力だろう。
その想いに支えられてか、50年程経た2015年現在でも尚このフィルムは美しいと感じさせられる。

映画という表現の一つの極みだろう。