2001年宇宙の旅

この作品は第3千年紀に再臨する救世主の物語である。

 

プロット:
古代アフリカ。モノリスの影響により道具を使うことを覚え生存競争に打ち勝った猿人。

西暦2000年代、核兵器を搭載した人工衛星に取り囲まれた地球。
月面でモノリスを発掘した人類はモノリスが発した情報送信先である木星を調査。その途上HALの反乱によりボーマン以外死亡。木星圏にてスターゲートを発見。

ゲートの先に用意された白い部屋はダンテの神曲に倣って天国を意味し、そこで部屋に響き渡る声の主とその御使いであるモノリス、そしてスターチャイルドに変容したボーマンは三位一体を成す。

彼の地球への帰還によって物語は終わりを迎える。

 

解説:
この作品はアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」で用いられた「神の如き宇宙人による人類の繁栄と終焉、進化」というモチーフを「オデュッセイア」や「ツァラトゥストラかく語りき」「西部開拓史」など様々なイメージソースで膨らまし、最終的に唯物的に解釈されたユダヤ・キリスト教神話といったものを提示している。

 

感想:
惑星直列などの映像アイデア、時代性を極力排除したクラシカルな音楽やモダンな美術、白い部屋に於けるオーソン・ウェルズを思わせる一連の型破りな視点構成、そしてそれらを表現する一コマ一コマが一枚の写真として成立しそうな程に美しいフィルム、などなど…

しかし真に驚嘆すべきは説明的なものを一切排して映像のみで語らせるという手法を貫徹したキューブリックの意志力だろう。
その想いに支えられてか、50年程経た2015年現在でも尚このフィルムは美しいと感じさせられる。

映画という表現の一つの極みだろう。

宗教と心理学が人類史に与える影響

宗教:
高等動物の意識と無意識の関係性の形而上的表現。

概要・意味情報を生み出すことの無い動物は自然環境があれば事足りるが、人間は意味情報を産出できる知的生物であり、その高いスペックゆえに自制心、つまり倫理道徳のような概念がなければ種として自滅することとなる。
その為精神性を培い倫理道徳を授ける上位存在が必要。

この「神」と形容される上位存在と人間との関係性を宗教的祭祀によって表現している。
宗教史とは人間の精神性獲得の過程とも言える。

理論構造・啓示や瞑想などによって得た意味情報を行いによって現実に具象化してゆく。
直観を思考によって具象化する「天才」と呼ばれる人のそれと同一の構造。

 

心理学:
人間の意識と無意識の関係性の形而下的理解。

概要・有史以前から続く人間の知的活動が19世紀末に結実し、人間は無意識という上位概念を客体として認識できる様になった。

その結果誕生した心理学による形而上的表象の形而下的理解を通じて人間は、倫理道徳の様な形而上的人間観をそれら固有の属人性を越え、精神医学を発達させる事となる。

理論構造・形而上的概念などに投影された心的概念という心的活動のログから規則性を見出し、心の理論構造を再構築している。
仮説の域を出るには脳という臓器の物理的な機能解明が待たれる。

 

結論:
自らの持つ破壊的手段により種として自殺出来るようになったという歴史的転換点を経て人類は、自制という倫理道徳的問題に真剣に取り組まざるを得なくなる。