万年筆の軸について

万年筆にとって軸とはニブを駆動させるための手段であり、その出力結果はインクの性能と紙の質に左右される、というプロダクトなんだろう。
筆記体験は主に軸とニブの組み合わせに大きく依存しており、この組み合わせは重要なファクターとなっている。

この関係は丁度武術に例えると、身体全体のモーションから発生する威力と、それを打撃力に物理変換する接点としての切っ先や拳の関係に近いだろうか?(武道は嗜んでいないのでよくわからないけど)

 

海外の軸のニブは画数の少ないアルファベットでの使用を前提としているからか、画数の多い漢字を使う文化圏では線が太すぎて使い難い事が多く、デフォルトでは不便な使い心地の軸が多い。なので私はニブは国産のものに変えている。
変えてみるとわかるけど、ニブが変わるだけで印象がガラッと変わる軸が多い。(金ニブに比べて実用性は無いんだけど、パイロットのカクノの顔がプリントされたニブに換えるとキャラクター性が生まれて面白い。)

金ニブは金を主にした合金で作った地金の先端に高硬度なイリジウムの合金を溶接して、金特有の弾力のある書き心地と長期使用可能な耐久性を実現している。
後昔は酸性の液体である古典インクを使用していたため耐腐食性のある金が使われていた。
そしてニブの先端にはイリジウムとオスミウムの合金であるイリドスミンという硬度の高い希少金属が使われており、その配合比率は各社秘密であるという。

個人的には金属でありながら弾力のある書き心地というのがなかなか感動的。

 

国産品は機能や品質に関しては圧倒的なものがあるのだけど、デザインに関しては海外の方が圧倒的、というのが現実だろう。
部分最適の総和が全体最適足り得無い様に、ここは部分だけを見ずに全体のデザインというもの自体にも目を向けて欲しいところ。
言い換えれば、この分野では日本の文具はまだまだ大き過ぎる伸び代が有る、とも言える。

 

文字情報による世界の再構築というのは人間精神の存在理由の一つだろう。
自らの知性なり感性なりを具象化したり表現したりする為の筆記具というプロダクトは、人間にとってとても重要なものだ。

投稿者:

ノクタジュール

万年筆が好きな人。